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福島地方裁判所会津若松支部 昭和46年(わ)110号 判決

主文

被告人を懲役六月に処する。

ただし、この裁判が確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

押収してある昭和四七年押第九号の符号1ないし12の各物件を没収する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和三九年一〇月二一日付で東京都公安委員会から銃砲所持許可をうけて散弾銃を所持し、狩猟に従事していたものであるが、梅津治と共に昭和四四年九月一八日午後五時ごろ、福島県耶麻郡猪苗代町字山ノ神原七〇八二番地の山林において、猟銃を用い熊を捕獲しようとしたが、同所は国道や人家にも近いばかりでなく、あけびの採取期でもあるため人々の出入が予測される状況にあつたから人畜に危害を与えるような危険な狩猟方法である据銃を仕掛けることは厳にこれを差し控え、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、同所山道上に弾丸一発を装填した一二番口径の散弾銃一挺を、地上に立てた二本の棒杭に地面と水平にわたして据えつけたうえ、唐松の細い棒を水平にし、引金の脇に立てた棒杭を背にして、一端を引金の前面に当てがい、他端を細い銅線の一端に結びつけて挺子棒とし、右銅線はその他端を照門にかけて銃口の約五メートル前方に立てた棒杭まで引いてこれに結びつけ、地上約三六センチメートルの高さに地面とほぼ水平に張り、もつて右銅線に接触するにおいては、唐松の細い棒から引金に作用して弾丸を発射する仕掛であるいわゆる据銃をなし、且つ同所から立去つた過失により、同日午後六時ごろ、たまたま同所をあけび採取のため通行した磯谷千尋をして右銅線に接触させて右散弾銃を発砲させ、同人およびこれと同行していた渡部亮の両名に弾丸等を命中させ、よつて右千尋に対し、全治約六ヶ月の両側膝蓋骨粉砕骨折を伴なう膝関節部貫通銃創の、右亮に対しては加療約二週間を要する右下腿部銃創の各傷害を負わせたものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

刑法第二一一条前段、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律第一五条、第二一条第一項第一号、刑法第五四条第一項前段、第二五条、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律第二一条第二項、刑事訴訟法第一八一条

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